2025.06.30
自作キャンピングカーは違法?合法にDIYするための基礎知識と注意点

最終更新日: 2025.06.30
「自分の手で、理想のキャンピングカーを作ってみたい」。
アウトドアやDIYが好きな人なら、そんな夢を抱いたことがあるかもしれません。
市販モデルは高額なうえ、設備や内装がパターン化されています。だからこそ、自作で自分だけの空間を追求したくなるものです。
ただし、改造内容によっては違法となるリスクもあるため、守る法的ルールを知っておく必要があります。そこで今回は、合法にキャンピングカーを自作するための基本知識や注意点をわかりやすく解説します。
自作キャンピングカーは違法?|知っておきたい法的な基本ルール
自作キャンピングカーのDIYに取りかかる前に、理解すべきなのが法律との関係です。
無許可での改造は違法となるケースがあるため、事前にチェックしておきましょう。
自作キャンピングカーに関わる法律とは
自作キャンピングカーを合法に仕上げるには、「道路運送車両法」と「保安基準」の理解が欠かせません。
基準を満たさない改造、いわゆる不正改造は法令違反となり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
整備命令が下る場合もあり、無視すると最大50万円の罰金や車両使用停止のリスクもあるため、軽い気持ちでの改造は避けましょう。
違法改造と合法改造の違い
車両の改造が違法になるかは、「車両の構造を恒久的に変えているかどうか」が判断基準です。
例えば、ベッドや収納棚を置く場合でも、工具なしで簡単に取り外せる状態なら合法と見なされる可能性が高く、車体にボルトで固定してしまうと、「構造を変更した」と判断され、構造変更申請が必要になります。
申請せずに使用を続けると、違法改造となり、車検にも通らなくなります。改造が完了した段階で、速やかに構造変更の手続きを進めましょう。
登録・構造変更・車検に関する注意点
キャンピングカーとして正式に登録する際、多くの場合は特殊用途自動車に分類される「8ナンバー」の取得が必要です。ですが、8ナンバー登録には、厳格な構造基準を満たす必要があります。
【8ナンバーのおもな構造要件】
- 就寝設備
乗車定員の3分の1以上(端数切り上げ)の大人が寝られるスペースが必要。たとえば、定員6人ならベッドは最低でも2人分。サイズは1.8m×0.5m以上が基本。 - 水道設備
10リットル以上の給水・排水タンク、シンクの装備が必要。 - 炊事設備
調理台やコンロを設置し、耐火・耐熱性が必須。
基準を満たさずに8ナンバーを取得したり、登録後に設備を外した場合は、整備不良や違法改造と見なされるおそれがあります。
一方で、8ナンバーを取らずに元の分類(普通車・貨物車)のままDIYも可能です。構造変更が不要な範囲であれば合法ですが、貨物車は車検が初回2年、以降は毎年となる点に注意しましょう。
DIYで合法にキャンピングカーを作るための改造ポイント
合法的にDIYを進めるには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。特に内装、外装、そして電気や水回りといった設備の設置には注意が必要です。
内装(ベッド・収納・断熱など)の改造
内装をDIYする際は、「荷物」と見なされるように設置するのがポイントです。
例えば、ベッドや棚を工具なしで着脱できる設計にすれば、構造変更の申請を避けられます。車検時には荷物をすべて下ろすのが基本のため、脱着のしやすさも重要です。また、重い家具を積む場合は、床面に近く、車体中央に配置することで左右のバランスを保ちやすくなり、走行中の安定性も向上します。見た目や収納力だけでなく、安全性まで考えた設計にしましょう。
外装・構造変更(後部座席・換気・車高など)の注意点
後部座席を取り外し乗車定員が変わる場合は、必ず構造変更申請が必要です。申請を怠ると、違法改造と判断され、車検に通らなくなります。
また、換気扇やルーフベントを取り付ける際には、車体のどこに穴を開けるかに注意してください。フレームなどの重要構造部に穴を開けると、車両剛性が低下し、保安基準に違反するおそれもあります。安全性に直結するため、施工前には設計図で位置をしっかりチェックしましょう。
電気・ガス・水回りの設置
電装設備のDIY、特にリチウムイオンバッテリーの導入は火災リスクと隣り合わせです。安全に使うために、以下のポイントを徹底しましょう。
- PSE認証品の利用
充電器やインバーターは、国の安全基準を満たしたPSE認証品を選びましょう。 - 適切なシステム設計
過充電を防ぐBMS(バッテリーマネジメントシステム)を組み込み、制御系統の安全を確保してください。自信がない場合は専門業者への相談をおすすめします。 - 放熱設計
バッテリーは密閉せず、通気性のある空間に設置し、熱がこもらないよう設計してください。
8ナンバー登録予定の場合は、水道や炊事設備にも基準があります。10L以上の給排水タンクや調理スペースなど、前述の条件を一つずつ満たす必要があります。
違法改造で起きた事故事例
知識不足や不適切な改造は、命に関わる深刻な事故を引き起こします。ここでは、実際に発生した横転事故と火災事故の事例から、その危険性を学びましょう。
横転の危険性
キャンピングカーは車高が高く、重心も上に位置するため、一般的な乗用車より横風に弱い構造です。
特に「キャブコン」と呼ばれるタイプは、トラックのシャシーに大きな居住スペースを載せた設計のため、横風の影響を受けやすく、横転事故が発生しやすい傾向があります。2024年8月に上信越自動車道で発生した横転死亡事故は、痛ましい事例のひとつです。
事故の要因は横風だけではありません。
DIYによる装備の追加や、荷物の偏った積載によるバランスの崩れ、シャシーの耐荷重オーバーも影響します。過積載は操縦性を著しく低下させ、タイヤのバーストや横滑りといった重大トラブルにつながる恐れがあります。
キャンピングカーの自作は、自由度が高く夢のあるプロジェクトですが、同時に法律や安全性に関する知識、手続き、施工スキルが求められるため、ハードルが高いのも事実です。
安全にキャンピングカーを自作するための手順
悲しい事故を防ぎ、自作キャンピングカーを安全かつ合法に仕上げるために、計画的な手順が不可欠です。
自作前にやるべきリサーチ・設計
まず、自作するキャンピングカーのスタイルや用途を明確にし、使用目的に合ったベース車両を選びましょう。あわせて、取得を目指すナンバー(例:8ナンバー)に必要な構造条件や保安基準について事前に調べておきましょう。
設計段階では、横転や火災などのリスクを避けるための工夫も必要です。荷物の偏りを防ぐレイアウト、過積載にならない重量設計、電装まわりの安全性を考えた構成にしましょう。
不安がある場合は、整備士や専門業者に意見を聞くのも、安全かつスムーズな製作につながります。
必要な届出・申請とその書類
自作で改造を施し、乗車定員や車体の寸法・重量に変化が出た場合は、構造変更申請が必要です。手続きは、車検のタイミングに関係なく、変更が発生した時点で早めにする必要があります。
申請先は、普通車なら運輸支局、軽自動車なら軽自動車検査協会です。
提出する書類は以下の通り。
- 現在の車検証
- 構造変更申請書(所定様式)
- 変更後の図面や寸法・重量に関する資料
- 必要に応じて改造箇所の写真
申請内容によっては、追加の資料を求められることもあるため、事前に窓口へ確認しましょう。
改造後の構造変更・車検の流れ
構造変更の申請が受理されたら、車両を実際に検査場へ持ち込み、実車検査を受けます。検査では保安基準に適合しているかが細かくチェックされ、合格すると車検証に「改」の文字が加わり、改造車でも公道を走行できるようになるのです。
定期的な車検はDIYによる改造内容を理解し、構造にも対応できるキャンピングカー専門店に整備を依頼するのがおすすめです。専門知識のある整備士なら、安全性の確認だけでなく、構造に応じた適切なメンテナンスも期待できます。
自作が不安に感じる方はキャンピングカーを購入することも検討しましょう
「本当に安全に仕上がるか不安…」「書類や構造変更に自信がない…」そんな方は、キャンピングカーのビルダーや販売店などから購入することも考えてみてください。いくら安く済ませたいからと言ってもやはりお金は命には代えられません。
中でも、日本RV協会(JRVA)に加盟しているビルダーや販売店は厳しい入会審査を合格した安全の会社ばかりなので、さらに安心できるキャンピングカーを購入できます。
また、金額を安く抑えたいという方も安心です。200万円台から購入できるキャンピングカーもあります。
自作と市販、それぞれのメリットを理解したうえで、あなたにとって最適なスタイルを見つけてください。
まとめ
自作キャンピングカーは、法令を守れば違法ではありません。
ただし構造変更や設備の設置には細かなルールがあります。無許可の改造は違法となり、車検に通らなくなるケースもあります。安全に楽しむために、必要な申請や基準を理解し、合法的なDIYを心がけましょう。